《森 光年》
前回の記事でご紹介した大阪は堀江の新店パティスリー『アクイユ』、ようやく行ってまいりました。 こんなところに? というくらい変哲もない路地にシンプルで洗練された店構え。すっきりした店内はイートインスペースが2席。 品ぞろえはケーキにタルト類、棚には焼き菓子と内・外装同様ミニマルな構成です。 接客担当のシェフの奥様のおすすめを参考に、チョコレートと柑橘のケーキをいただきました。 シェフが修行された『なかたに亭』はチョコレートの美味しさで知られた大阪の老舗パティスリー。アクイユのチョコレートケーキもなかたに亭ゆずりの美味しさです。 どっしりと濃厚なチョコレートに、詳細は失念しましたが初めて聞く名前のマニアックな国産の柑橘類のコンフィチュールが隠し味。 かすかな柑橘の苦みがチョコレートの重さと絶妙なつり合いで、師の教えを忠実に受け継ぎつつもそこにとどまらない姿勢が見えた気がしました。 かつて大阪の最先端のおしゃれタウンだった堀江は、なにわ筋を挟んで東西のエリアに分かれておりまして。 西側にはアパレル、東側にはカフェなどの飲食関係が集まる傾向にあるのですが、アクイユが店をかまえたのは西側のエリア。 これほどのレベルのパティスリーが西側にできたのはちょっとしたニュースですね。 カフェにせよ甘いものにせよ、西側にはこれまであまりハイクオリティなものがない印象だったのですが、状況は変わりつつあるようです。 シェフの奥様いわく、堀江にはパティスリーの名店が多いのでそこに店を構えるということに内心どきどきだそうで。 とはいえ、食べる側からすればこれほどのレベルの高いフランス菓子を食べられる店がひとつの町に複数あるというのは嬉しいかぎり。 パティスリー アクイユと堀江西側エリアの今後に、期待して注目したいと思います。 そんなわけで森光年なんですが、先の休日、ご近所にある本格派のブランジュリ『トロワ』が一日だけのカフェ営業をしていると聞きつけ大急ぎで駆けつけました。 四年前、わが地元にいくつも残る古い家屋の一件(蔵もあるような立派なお屋敷です)を改装してオープンしたこのお店。 大阪市内とはいえローカルきわまる辺境の地にありながら、本格的なバゲットやヴィエノワズリーから、あんパンやクリームパンなど町のベーカリーの定番商品まで、幅広いパンを高いクオリティで作り続けて地域に愛されております。
このトロワなんですがオープン当初から看板に『珈琲とパン』とありまして。
ともにパン職人である若きオーナーご夫婦はコーヒーにもこだわりがあるらしく、美味しいパンとともにコーヒーも提供したいとずっと考えておられたようです。 ところが、多忙をきわめるパン作りと並行してイートインでドリンクの提供を行うのは至難の業。 店内には小さいながらも素敵なイートインのスペースまで確保されていたにもかかわらず、看板の『珈琲とパン』の文字は宙に浮いた格好になっておりました。 そんなトロワが一日だけとはいえカフェ営業をするというのですから大いに期待しておじゃましたのですが、結論からいえば期待以上でした! まず、なんといってもコーヒーが美味しい。ふわっと香るタンザニア系の芳香とは裏腹に、口あたりはクリアでしっかりとした苦味。 焙煎具合もブレンドの配合も抜群の豆を、丁寧にドリップした良質な一杯で、コーヒーに対する並々ならぬ思い入れを感じます。 お店の方が他の客さんと話しているのを小耳にはさんだ程度の不確実な情報なんですが、なんでも今後はイートインでのコーヒーの提供を始めていく予定だとかなんとか。 もし実現したら、ハイクオリティなパンとコーヒーを楽しめる最強のカフェ(本業はあくまでパンの方ですが)がわが地元に誕生するんですね。なんだか夢のよう。 トロワの店先は元の屋敷の構造をいかした緑あふれる庭になっておりまして、お茶をしながらの眺めも最高なのです。 これはカフェ利用可能になったら人気が出ますよ。大阪中、いや全国からカフェ好きが押し寄せてほしいと思います。 ちなみにコーヒー豆は昨年末に堀江にオープンした『グランノットコーヒー』で焙煎されたものだそうで。 見た目は近ごろ人気のサードウェーブ系のコーヒースタンド風ながら、浅~中煎りをよしとするサードウェーブの風潮にあらふぁうかのように深煎りの焙煎にこだわっていると噂のカフェですね。 まさかここに目をつけてくるとは。トロワのご主人の慧眼には感服しました。 私も前からグランノットコーヒーは気になっておりました。 が、このお店の立地は堀江は堀江でも、先ほどのアクイユがあるのと同じアパレル密集地の西側エリアなんですよね。 なので、いかにもアパレル系の若く威勢のいい人たちが大勢で陣取ってミーティングらしきことをしていたりして、恥ずかしながら気後れして入れずにいたのです。 が、次の機会には勇気をふり絞って入ってみようと思います。 さて、トロワのカフェですがコーヒーだけでなく一緒にいただいたデザートも当然すばらしいものでした。 ババ、という名前のイタリアやフランスでよく作られるお酒のシロップたっぷりのお菓子なんですが、長くなってきましたのでこれに関してはまた次の機会に書こうと思います。 |
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