《森 光年》
前々回、もしかしたら始まるかもしれないと書きました大阪市平野区のブランジュリ『トロワ』のイートインですが、先日ひっそりとスタートしておりました! さっそくアプリコットとハチミツのバゲット系のパンと一緒にコーヒーをいただきましたが、やはり想像していたとおり最高ですね。 トロワのパンの美味しさは折り紙つきですし(しかも温めなおしてくれたのでより美味しい)、堀江のグランノットコーヒーの深煎りのブレンドも格別。 古い屋敷を改装した店内の雰囲気も素敵ですし、窓からは緑がいっぱいの庭が眺められます。 多くのカフェ好きにこの店を知ってほしいとは思うけど、トロワの本業はあくまでパン作り。 カフェ目当てのお客さんが殺到しても困るのでしょうねえ。難しいところです。 そんなわけで森光年なんですが、前回の記事で書きました『アニエルドール』のランチに行ってまいりました。 昨年の八月、大阪は西区の靭公園からほど近い場所にオープンしたフレンチのお店。 ほとんど一年ぶりの来訪でしたが、あいかわらず素晴らしい。いや、去年よりまた一段と美味しくなっているかもしれません。 ランチは2000円(税別)のコースのみ。 アミューズ(つきだし)、前菜、メイン、デザートに食後のお茶とお茶菓子がつき、前菜とメインは肉と魚から選択可能。デザートも二種類から選べます。 正確なところはわかりませんが、メニューはだいたい2ヶ月ぐらいで変わるのではないかなと思います。
今回は魚の前菜と肉のメインを選択。
デザートは「チョコレートとヨモギ/ミルクのアイス」としか書かれていないミステリアスな方を。 まずはアミューズ。小さな球状のコロッケで、中身は枝豆とホルモン! 中近東ではひよこ豆を使った球形のコロッケが定番だと聞きますが、そのアレンジでしょうか。いや、むしろ串カツ屋のメニューからヒントを得たのかもしれません。 とはいえ、味わいは完全にフレンチ。枝豆の豊饒な風味が口いっぱいに広がります。 ホルモンが隠し味程度ですが、しっかりと余韻を引き締めています。コロッケの衣と枝豆の食感のハーモニーも見事。 最初の一品でグッと心をつかまれました。さすがです。 前菜は低温調理してハム状に仕上げた地鶏とかぼちゃのソース、そこになんとブリオッシュ(フランスの甘いパン)のアイスクリーム! 全体に白カビのチーズであるバラカがふりかけてあります。 地鶏の火の通し加減は絶妙。複雑なうまみがぎゅっと閉じ込められています。 ブリオッシュのアイスは仰天の一品。アイスなのにちゃんとブリオッシュが感じられるんですね。で、そこに甘く濃厚なかぼちゃのソースと白カビのチーズ。 文字で読んでもなにがなにやら想像つかない料理だと思います。 が、実際に食べてもなにがなにやらわからず、それでいてただただ溢れんばかりの美味しさだけが感じられるという、とんでもない代物でした。 私ごときの知識とボキャブラリでは表現不可能。ただひたすらに旨い。魔法のようです。 メインはうって変わってフレンチのスタンダード、真鯛のポワレです。 ただし、ソースは定番のオレンジでなくシードル、つまりリンゴのワイン。しかも泡状のソースです。 真鯛とリンゴ! 想像のつかない組み合わせですが、不思議な融和がありましたねえ。淡泊な身に酸味が効いて、新たな味覚の地平を垣間見せてくれました。 ポワレには十穀米と桜エビのリゾットが添えてあり、どっしりと肉厚な真鯛とあいまって、年々小食になりつつある私にとってはかなりの食べ応え。 昨年2回ランチしたときもメインの肉料理がどっさり出ましたが、繊細な味付けとは裏腹にメインがかなりがっつり系なのもアニエルドールの特徴ですね。 シェフは肩ひじ張らないフレンチを目指しているとおっしゃっていたので、ボリュームはそのあらわれかもしれません。 さていよいよデザート。 甘いモノ好きの私にとってフレンチのランチでもここが最重要ポイントです。 「チョコレートとヨモギ/ミルクのアイス」。 なんとヨモギはクレームブリュレになって出てきました! しかも、クレームブリュレを凍らせてアイス状にしたカタラーナというスペインのお菓子だそうです。 チョコレートは荒い粉状のものを皿に散らして地面を、そこにくるりとカールした枯葉状のチョコをあしらって秋の情景を表現してあります。とても美しい一皿。 見た目だけでなく味も秀麗で、ヨモギのカタラーナの口どけの濃厚さとヨモギの風味の豊かさに恍惚としてしまいました。 もうデザートを食べ終えた時点で質、量ともに深く満足していたのですが、食後のお茶菓子にもしてやられました。 ドングリのように底が円錐状になっている、小さくてかわいらしいマドレーヌ。口に入れると美味しいキャラメルがじゅっとしみだして嬉しい不意打ち! 肩ひじ張らないフレンチのはずが、最後の最後まで気を抜けない。おそるべしです、アニエルドール。 |
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