《森 光年》
先日、知人らとミナミで食事する機会がありまして。どうせならばと以前から気になっていた店に行ってまいりました。 大阪ミナミの繁華街、道頓堀の西のはずれ、対岸にアメリカ村をのぞむ川沿いにひっそりとたたずむ小さなビストロ『Le pont』。 大阪の町中にありながら、どこかパリの趣きすらある店構え。 一昨年にオープンして以来、よく前を通りがかってはいたのですが、なかなかミナミで飲む機会もなかったために訪問できずにおりました。 蛇足ながら、ビストロという語は本来、フランスの居酒屋のこと。 日本ではこの言葉が「カジュアルなフレンチレストラン」の意で使われることが多いので、フレンチのおかずでワインを飲むような店のことはフレンチバル等のいささか苦しい造語で呼ばないと誤解を生んでしまうという事情がありますね。 バルというのはスペインの居酒屋のことなので、フレンチバルというのもずいぶん無茶な言葉であります。 日本ではビストロと名乗っておきながらメニューはパエリアやアヒージョ等のスペイン料理ばかりでフランス感ゼロという店もよく見かけますが、その大雑把さもまた舶来文化を受容するということのひとつの在り方なのかもしれません。 ちょっと前には「ビストロで煮込んだみたいな」というキャッチコピーのコンビニか何かのハンバーグがしきりにテレビで宣伝されていたりもしましたっけ。 べつにビストロはハンバーグ煮込むところではないんですが。 そんなわけで森光年なんですが、すっかり話がそれてしまいましたが、結論から言うとこの『Le pont』、料理もお酒も美味しくてリーズナブル、ちゃんとフレンチに軸足を置いてブレのない良いお店でありました。
私たちが訪問したときは寡黙そうなシェフがおひとりと、新人だという給仕の女性の二人体制。
店内はカウンターのみ5席程度ですが、ゆったりとしたテラスがあって6~8席ぐらいは確保できるのではないでしょうか。 とはいえ小さなお店ですので大人数で押しかけるのは避けたいところですね。 店内は常連さんが和気あいあいで暖かなムード。 大柄で赤ら顔の白人男性が楽しそうに談笑していたりと異国情緒もありながら、敷居の高さは感じません。 土日は昼の12時からオープンしているのも嬉しい。 料理はだいたい500円~1200円ぐらいの価格帯でしたでしょうか。前菜に魚料理に肉のメイン、デザートまで、フレンチに主軸を置いたラインナップ。 前菜盛りやフォアグラのオムレツ、肉と豆のテリーヌ、ムール貝のワイン蒸し等をいただきましたが、どれもとても美味でした。 とくによかったのが鴨のコンフィ。 低温の油で鴨肉を似た定番料理ですが、けっこう飲み食いした後でも美味しくいただける脂加減。たっぷりと添えられた鴨脂のフライドポテトともどもペロッとたいらげました。 イタリアンとかスパニッシュとか適当におしゃれな食べ物だしとけばいいや、ではないフレンチへのこだわりを感じさせる料理で、とても満足できました。 今度はデザートも食べてみたいところ。 お酒のメニューはグラスワインが500円~という価格帯。キールやキール・ロワイヤル等のカクテルもありました。 カールスバーグやカシスオレンジ、サングリアなどの流行りものも置いてあるのは時流というものでしょうねえ。 なにより嬉しかったのフランスはマルセイユ地方のリキュール パスティスがあったこと。 メニューにこれが載っているというのはフランス愛を感じますね。銘柄はリカール。水割りでいただきました。たっぷりの量で600円。 夏になると飲みたくなるんですよね、パスティスの水割り。 アニスの香りが強くて初めての人はぎょっとするようなリキュールですが、慣れてくるとカルピス感覚で飲めるようになるから恐ろしい。 これまで夏の日の高いうちにパスティスが飲みたくなったら、新町のフランスなカフェ『シェ・ドゥーヴル』まで足をのばしていましたが、おかげで選択肢が増えました。 道頓堀川を行きかう船を眺めながらゆったりできるテラスのロケーションも最高ですし、こんないい店をスルーしていたなんてじつにもったいない。 もっと早く行っておけばよかったですね。 |
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