《森 光年》
以前に何度か言及している私の地元のマニアックなパン屋さん『アップルの発音』の開店時間が、このあいだの日曜から8時になりまして。 これで7時の開店にあわせて早起きしなくてすむ(開店直後を狙わないとパンがなくなっていたりするので)と喜んで出かけていったのですが、8時6分に到着してみるとほとんどの商品が売り切れていました……魔の6分間! これはもう、開店前からならんでおけということでしょうか。まあ、このあいだは11時ぐらいに行ってみたら普段は見かけない惣菜パンを含め多数のパンが残っていたりもしたので(一方で早々に売り切れて閉店していたことも)、運任せでいろんな時間帯に訪れてみるのが正解なのかもしれません。 しかしまあ、残り物にはなんとやらで唯一のこっていたクリームチーズとりんごのキッシュはのけぞるほど美味しくて、幸せな日曜の朝でした。 そんなわけで、『アリス・イン・ワンダーランド』が話題をさらい、夏にはジブリアニメ『借りぐらしのアリエッティ』が公開される2010年、ついに時代がライアーソフトの『Forest』においついた! と勝手にひとりで盛り上がっている森光年なんですけども。 HD Forest ライアーソフト どういうことかといいますと、18禁ゲーム界の異色メーカーであるライアーソフトが2004年に発売したこの『Fprest』というゲーム、新宿に住む数名の男女がイギリス児童文学にもとづく数々の怪異に見舞われ、サバイバルと謎解きを余儀なくされるというストーリーなんですね。 で、主人公らが巻き込まれる怪異の元ネタとなるイギリス児童文学(なぜそんなせまい縛りが存在するのかという部分に、物語の根幹に関わる秘密があるのですが)には、アリスやプーさん、あるいは指輪物語のような著名な作品はもとより、アリエッティの原作である『床下の小人たち』のような日本では比較的知られていない作品も多数含まれておりまして、シナリオライター界の異才・星空めてお氏作品らしい大変にディープな内容となっております。 ちなみに、上に貼りつけた動画の52秒目あたりに出てくる、黒くてもやっとした数匹のもののけみたいなのが「借りぐらし」だったと思います。アリエッティがこんな感じだったら子供がひきつけを起こしていたかもしれません。っていうかそれ以前に宮崎駿御大がブチ切れていたと思います(なんで美少女を出さないんだ、と)。 この『Forest』なんですが、ほんとうに面白いゲームなんですよね。なにしろ斬新な試みが幾つも織り込まれていて、ゲーム中のテキストと声優さんの音声とが必ずしも一致しておらず、まるで舞台劇の掛け合いのようになっていたり、あるいは一章まるまるミュージカル仕立てで声優さんら歌いっぱなしだったり。あまりの奇妙さに冒頭で投げ出してしまう人もいるぐらいです。 しかも斬新すぎることには、これはちょっとネタバレなんですが、すべてのEDを回収しようとしておなじ部分を繰り返していると、登場人物がそのことにしだいに勘づいて、予定調和を破壊しようと暴走し始めたりするんですよ。この仕掛けには驚きました。 舞台上の演者が突然客席に語りかけてくるような、物語の傍観者として安穏としていたプレイヤーがいつのまにか舞台上に引きあげられているという巧妙な構成で。それがまた、児童文学の世界に巻き込まれていく主人公たちの境遇と入れ子構造になっているという。ほんと、背筋が凍りましたね。 この名作を埋もれさせておくのは本当に惜しいので、アリスとアリエッティに便乗してコンシューマー移植とかマルチメディア展開とか誰かやってくれないもんでしょうか。女性ユーザーとも親和性の高い内容だと思いますので、ノイタミナ枠でアニメ化とか、どうでしょう。 |
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