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Who Will Survive in 日本
《森 光年》
なにかのテレビ番組で一万円札を模した巨大オブジェに不眠不休、立ちっぱなしで触れ続ければ100万円という企画をやっておりまして。
挑戦者である芸人さんたちが最後のひとりとなって賞金を獲得すべく、ほとんど丸一日にわたる壮絶な死闘を繰り広げていたんですが……それってスティーブン・キングの『死のロングウォーク』じゃないですか!

スティーブン・キングが学生時代に書いたという長編小説『死のロングウォーク』は独裁者が支配する近未来のアメリカで少年たちが最後の一人になるまで不眠不休でひたすら歩き続ける競技(一定時間以上立ち止まってしまったり、歩く速さが規定速度以下になると即射殺)に参加するというじつに悲惨な内容を執拗なまでの克明な筆致で描ききって最後まで一切の救いなし、といういかにもキング好みの一作です。

くだんのバラエティ番組も、座り込んでしまったら10カウント以内に立ち上がらないと失格というルールがあったりとか(逆に言えばその時間内なら足を休ませることができるわけです)、時間が経つにつれて残った芸人さんたちのあいだに敵愾心を上まわる連帯意識が芽生える展開があったりとか、いちいち『死のロングウォーク』にそっくりでした。

『死のロングウォーク』の肝は、連帯感が芽生えようがなんだろうが他の参加者が全員脱落するまでゴールも期限もないレースを延々と続けなければいけないという競技の過酷さと悲惨さにこそあるわけですが、それをまさかテレビのバラエティ番組でやってしまうなんて……実際のところわれわれはもはや、ディストピア小説の中の世界を生きているのかもしれません。


さておき森光年なんですが、ラップの始祖とも呼ばれるポエトリー・リーディング界の伝説的偉人、ギル・スコット・ヘロンが5月27日にニューヨークの病院で亡くなったそうで。享年は62歳。
スヌープドッグやエミネムらラッパーはもとより、レディオヘッドのトム・ヨークのようなジャンルのちがうアーティストも哀悼の意を表明しており、彼が音楽界に与えた影響の巨大さをうかがわせます。

昨年には16年ぶりのニューアルバムを発売し、また最近になって現役の有名アーティストらによるリミックスが作成されるなど活発の動きのあった中での死去。
彼の名前と曲ぐらいは聞いたことがあるという程度でポエトリー・リーディングやビートニク文化に造詣が深いわけでもない私が惜しい人を亡くしたなどとうそぶくのも空々しいですが、追悼の意を込めてイギリスのDJ、ジェイミー・XXが今年の2月に発売したギル・スコット・ヘロンのリミックスアルバムの中の一曲『I'll Take Care Of U 』のPVを。

Gil Scott-Heron, Jamie xx - I'll Take Care Of U

 
ついでに、カニエ・ウエストによるギル・スコット・ヘロンのリミックス『Who Will Survive In America』も(こちらは公式にアップされた動画ではないので、そのうちに削除されるかもしれませんが)。

Who Will Survive In America- Kanye West

 

雑記 | 2011/06/05(日) 21:39 | コメント(0) | トラックバック(0)
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