《森 光年》
部屋を整理していたら4~6年前の近畿ローカルのグルメムック本が数冊でてきまして、読み返してみたらこれが面白い。 ミシュランで星ももらった大阪を代表するフレンチの名店のひとつ『トゥールモンド』が「気軽なカジュアルフレンチ」的あつかいで紹介されていたり、いまや大阪のラーメン好きにとっては聖地的な存在となっている『麺屋 彩々』が新規オープンの店として小さく載っていたり(このときはまだ当サークルメンバーの家の近くにあったんです!)して時の流れを感じます。 なかでも傑作だったのは、現在では超有名なラーメン店『金久右衛門』が「焼き飯がおいしいラーメン店」のコーナーに載っていること! もちろん掲載されているのは自慢のゴールドやブラックのラーメンではなく焼き飯の写真です。 この『金久右衛門』が口コミで押しもおされぬ人気店となり、テレビ番組で大阪ラーメン頂上決戦をたたかい(負けましたが)、カップラーメンになってコンビニに並んだりするようになると誰が想像したでしょうか。 ましてやその後、あちらこちらに支店を出店しまくり、ついには観光客相手のガチャガチャした店が立ち並ぶ道頓堀にまで進出して「なんだかなあ…」と思われる存在になろうとは。 そんなわけで森光年なんですが、すっかり感想を書き忘れていて、いつの話だよという感じですが先月下旬にJR大阪三越伊勢丹でおこなわれていた『ケ・モンテベロ』と『ラヴィルリエ』が出店する催事に行ってきました。 大阪を代表する二大パティスリーの競演となるこのイベント、『ラヴィルリエ』のほうには最低でも月に一度のペースで通っている私ですが『ケ・モンテベロ』のケーキを食べるのは岸辺の店舗に足をはこんだ昨年の11月以来になるでしょうか(本当は足しげく通いたいのですが、なにしろ遠いので……)。 『ケ・モンテベロ』は昨年の10月に開店以来その人気を支え続けてきた橋本シェフが交代し、私が訪れた11月は新シェフへの引き継ぎ期間だったそうで。 ということは完全に新シェフ体制になった『ケ・モンテベロ』のケーキを食べたのは今回の催事が初めてということになりますが、結論から言うとシェフが変わっても大阪を代表するパティスリーの一角という評価は変わらず、しかし方向性は180度変わっているというのが私の感想です。 モンテベロの前シェフ、橋本さんに対する私の印象は王道の古典フランス菓子をまっすぐに作る人、というものでした。 昨今どのジャンルでも古典の新解釈が流行っていたりしますが橋本さんの場合はそういうのともまた違い、古典そのもののスタイルを墨守する。 たとえばモダンなスタイルのフランス菓子なら新鮮なフルーツはその素材を生かして使用するものですが、橋本シェフは技巧を凝らして徹底的に加工してからケーキに組み込む。 そうしたスタイルで作られた菓子は当然の帰結として古臭い懐かしの洋菓子になってしまうものですが、橋本シェフのそれはあくまで鮮烈。ほとばしす才気を感じさせ、古典を墨守しているのにモダンな菓子よりも斬新に思えるほどで、ああこれが天才というものなのだなあと唸らされたものです。 一方、新体制のモンテベロの菓子は完全なるモダンスタイルで、新鮮なフルーツの味わいを主体に見事に組み立てられている印象。橋本シェフのスタイルとは正反対ながら、このレベルの完成度のフランス菓子は全国を見まわしてもそうはないだろうと思いました。 そんな新生『ケ・モンテベロ』のほうがどうやら安泰そうとなると、やはり気になるのは橋本シェフの今後の展開ですね。 ちょっと小耳に挟んだ話では、当然というかなんというか独立して自分の店を持つのだそうですが、問題はその立地です。 シェフが独立して店をひらく場合、修行先の店と近い場所を選ぶ傾向があるように思いますが、橋本シェフの店が岸辺にオープンしたらさすがに月一で通うのはつらい! できれば大阪市内で、と願わずにはいられませんが、あれほどの天才シェフのことですから大阪というローカルなエリアにとどまる保障はありませんからねえ。 とにかく楽しみに待ちたいと思います。 |
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