《森 光年》
かのYSLことイヴ・サンローランがエディ・スリマンの復帰にともなってブランド名を変更、サン・ローラン・パリとなったことご存知でしたでしょうか。 エディ・スリマンといえば00年代初頭、クリスチャン・ディオールの男性部門であるディオールオムの創設に関わり、世界的なメンズファッションのブームを巻き起こしてファッションの歴史を永遠に変えてしまった偉大なデザイナーのひとりです。 そのエディは2007年、人気絶頂のうちにディオールオムを辞任、その後は自分探しのようなことをしていたようですがついに今年、90年代にメンズのディレクターに就任していたことのあるイヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターとして復帰を果たしたわけです。 で、エディ就任が発表されてから今まで極秘あつかいにされてきた新コレクションが今月2日ついに公開。持ち回りブログの悲しさで話題に乗り遅れた感はありますが、動画をご紹介いたします。 Saint Laurent Spring 2013 満を持して発表されたこのコレクション、モード好きの反応は賛否両論で、「いつものエディの服」と評する人がいるかと思えば「サンローラン過ぎてエディらしさがない」という人もいます。 ほかにも「パリのモードを感じる」「いや、LA風でパリらしさがない」「斬新!」「マンネリ!」と評価は分裂気味。 イヴ・サンローラン時代のエディの同僚で現在はランバンのレディースのデザイナーであるアルベール・エルバスなどは「これはとてもエディだ。そしてとてもサンローランだ」と評して逃げにでたそうです。 私などは女性の服に関しては何もわからない人間ですので論評は差し控えますが、ただひとこと申し述べるなら、魔女みたいでかっこいいですよね。 そんなわけで森光年なんですが、前回ちらりと言及しましたHanako特別編集『大阪最新案内。』というムック、これがなかなかに良い本でして。 全国区の女性誌であるHanakoの別冊として年に数回発行されている大阪特集グルメ本の最新のやつなんですが、近畿ローカルの情報誌ですらまだ取り上げていないような最旬のお店も含めて、ここ一年くらいにオープンした美味しいお店が網羅的に紹介されております。
まずはなんといってもフレンチレストランの『グランシャン』。今年5月に北新地のビルの3階にオープンしたカウンターだけの小さなお店ですが、開業するやいなや食通のあいだで瞬くまに噂が広まった大阪モダンフレンチの超有力新店です。
が、不甲斐ないことに近畿ローカルの情報誌はいまだこの店を取り上げてなかったんですよね(私が見落としている可能性もありますが)。 先々月の『あまから手帖』の北新地特集でも触れられてなくて、門上さんなにやってんだって感じでした(注:門上武司。関西ではテレビに頻繁に出ていて知名度のあるローカル有名人。あまから手帖の最高顧問)。 おつぎは靭公園ちかくのイタリアン『ラ チチェルキア』。イタリアのマルケ地方に惚れ込み、マルケで料理修行した女性オーナーの小さなお店です。大阪でマルケ料理が食べられるお店はここだけ。全国でも幾らもないと思います。 こちらも5月にオープンした新店で、まだ雑誌どころか食べログにも登録されていませんが近隣のイタリアン好きのあいだでクチコミが広がって予約しないと入店困難なようですね。 私も靭公園のイタリアンバルのご主人から勧められて行ってみんですが、予約で満席とのことで入店できず。そのうち絶対リトライしてうさぎ肉を食べてやる! と心に誓っております。 余談ながら、チチェルキアさんでは窓ガラスに直接メニュー表が書かれていて店外からもそれをうかがい見ることができるのですが、私が入店できなかったその日、うさぎ肉料理の値段の横にかわいいうさぎさんのイラスト(ミッフィー的なやつ)が描き添えてあったのは女性ならでは残酷さというかなんというかを感じました。 その他、前回もご紹介した『ル・プティット・パピヨット』さんや新町の『やまもと菓子店』さん等々、よくぞこれだけ珠玉の新店を紹介してくれたとHanakoに喝采を送りたいですね。取材は関西の編集プロダクションに丸投げしたんだとは思いますが、それにしたってなかなかここまで痒いところに手がとどく本は作れますまい。 大阪在住の方、観光やお仕事で大阪に来られる方、書店で見かけたらぜひ手にとっていただきたいです。 それにしてもこうしてあらためて見ると、最近でも良いお店がいっぱい出来ていますね大阪は。 じつをいうと大阪のグルメ界はここのところ活気がなくて、美味いもの好きたちも大阪市内は飽きたなどとうそぶいて京都や神戸に目を向けがちという傾向を肌で感じておりました。 かくいう私もなんとなく倦怠感のようなものを抱いてもやもやしてたんですが、問題の根幹は外部の刺激が少ないことではなく、われわれ受け手が刺激を受け止める感性を鈍麻させていることにあるのだとこのムックで再認識しました。 食都といわれつつもその実態はグルメ不毛地帯だった大阪。21世紀に入って意欲ある店が次々オープンしてその状況を変えていき、ミシュランガイド関西版の発行を起爆剤としてグルメブームが到来。 それから数年が経ったいま、われわれはこの状況に慣れすぎてしまっていたのだなあと反省しきりです。 |
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