《森 光年》
姫路市立美術館で11月3日から象徴派展ですと!? いや、まあとりたてて象徴主義が好きなわけではないんですが、ルドンの『眼をとじて』が展示されるとあっては捨て置けません。 とはいえ大阪から姫路は近いようで遠いですからねえ……これだけのために行くとなると躊躇してしまいます。 有名な話ですが、19世紀末の遅咲きの画家オディロン・ルドンは初期のころ、暗い生い立ちがそうさせたのかモノクロの奇怪な絵ばかり描く人だったのですが、50歳をすぎてはじめて家庭の暖かささを知ると一転、やさしい色彩を用いるようになったんですね。 凍えきった石の部屋から一面の春の野に足を踏みだして戸惑う人のような、ためらいがちに表現されたその色使いがたまらなく好きなのです。 しかし、この記事を書くにあたって調べてみて驚いたんですが、『眼をとじて』をはじめとしてルドンの絵ってけっこう岐阜県美術館に収蔵されてるんですね。好きな画家なのに恥ずかしながら知りませんでした…… ルドンの絵が複数常設展示されている岐阜県、うらやましすぎる。 人口あたりの美術館の数が47都道府県中47位で、バブルのころ19億3千万円で買ったモディリアーニの裸婦画が展示する場所もなく倉庫の壁にいつまでも立てかけてある某阪市とはえらいちがいです。 そんなわけで森光年なんですけども、風見鳥に先に書かれてしまいましたが私も行ってきました『モールホソイコーヒー』さん四周年。 古きよき商都大阪の華やいだ時代の面影がそこかしこにうかがわれる街、淀屋橋。その一角にたたずむ昭和2年建造の芝川ビルの地下、かつては金庫室だった空間にコーヒーの美味しいカフェが開業してはや四年。 ずっと通い続けてきた身としては感慨ぶかいです。
今回の周年記念は昼間は平常通りのカフェ営業(+特別メニュー)、夕方からは立ち飲み形式でお酒を出すバル営業という変則的なスタイル。
ほんとうはカフェ営業の方でゆっくり記念すべき日を祝いたかったのですが、当日は法事があったため、淀屋橋にたどり着いたころにはすでにバル営業に切り替わっていました。 ふだんは店主の細井さんが一人できりもりしておられるカウンターに、「モールホソイコーヒー」と大書したそろいの黒いTシャツ(欲しい!)を着たスタッフがずらり。 DJがキングクリムゾンをサンプリングしたBGMを流すなか、若くてノリのいいお客さんが来るわ来るわでちょっとしたクラブの様相に。 前職がアパレルだったことと関係があるのか、一見ピーナッツのチャーリー・ブラウンのような風貌ながら店主の細井さんはクラブカルチャー関係の知り合いが多いようで、ときどきそういう感じの若い人がコーヒーを飲みに来ていたんですが、その人たちが一挙に押し寄せてきた感じでしたね。 当日プレイしていたDJさんも細井さんの知人のようで、その人がモールホソイコーヒーをイメージして選曲したらしい手焼きCDが去年の3周年記念イベントに引き続き今年も配られておりました。 ふだんジャズやラテンミュージックが流れていることの多いお店にふさわしく(風見鳥の記事でモールホソイコーヒーさんでは平常、BGMを流していないかのような記述がありましたが、そんなことはありませんよ!)、そちら寄りの選曲。 自分ではあまり聞かないジャンルだけに面白かったです。 とくに良いなと思ったのはグラミー賞歌手カサンドラ・ウィルソンの『Another Country』という曲。 Cassandra Wilson Performs 'Another Country' Live at the WSJ Cafe ジャズシンガーが歌っているのに、どこかしらアイリッシュ音楽のような哀感があるのが不思議です。 調べてみたら、今年の6月に発売されたばかりのアルバムの曲なんですねえ。本業だから当然とはいえD、Jさんすごいアンテナ感度。 三周年のときにもらったCDにもキャサリン・ウィルソンの『Blackbird』という曲が入っていたし、よほど好きなんでしょうか。 Cassandra Wilson-Blackbird (2010) |
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