《森 光年》
なんの嫌がらせか知りませんが、大阪ではもう四週間連続で金曜から土曜にかけて雨が降っています。 休日どこかに出かけないと死ぬ症候群の私にはつらすぎる! 今年一年お世話になったお礼をしにうかがいたい店が、たくさんあるんですがねえ。 そんな中ですが、何軒かはご挨拶にうかがうことができました。 その一軒が大阪は堀江にある『カフェ ヴェーク』さん。ウイーンやドイツのお菓子(以外にもフランス菓子やオリジナルのものなど、店主の久保さんは気が向けばなんでも作る人ですが)と、世界のスペシャリティ・コーヒーがいただけるお店です。 この時期のお目当てはもちろんザッハトルテ! チョコレートをザクザクの食感に仕上げるために、寒いこの時期しか作れないウイーンの代表的なケーキです。 ステイサム脱衣カンフーアクション映画の金字塔『トランスポーター3』の劇中のセリフの中にも出てきましたが、甘さ控えめあっさり風味のザッハトルテには生クリーム(砂糖なし)! この黄金コンビを口いっぱいにほおばると、冬が来たなあという感じがいたします。 そんなわけで森光年なんですけども、前回、冬についてのよもやま話のついでに書こうと思っていてついつい忘れてしまったのですが、今年も昨年に引き続いてクリスマスシーズンのドイツの伝統的なお菓子、シュトーレンが大はやりでございました。 ドライフルーツやナッツを練りこんだパンケーキに砂糖をまぶしたその見た目が、おくるみに包まれた幼子イエスを模しているともいわれるこのお菓子、ドイツではクリスマス期間中、薄切りにして少しずつ食し熟成されていく旨みを楽しみながらクリスマスを待つといいます。 早いところでは一昨年あたりからカフェなどで供され始め、昨年はフランス菓子の巨匠までがシュトーレンを売り出すという大流行。今年はなんと近所のスーパーにまで並んでおりました! ここまでいくあとは陳腐化するのみで来年あたり消えているかもしれませんが、ドイツ菓子らしく素朴でしっかり旨いものですから、日本でもいつまでも食べられると嬉しいです。 というか、一昨年のクリスマスシーズンに大流行していたフランス菓子のガレット・デ・ロワ、どこに行ったんでしょうねぇ… あのときは、ガレット・デ・ロワの親戚であるウイーン菓子のケーニヒスクーヘン(どちらも「王さまのケーキ」というような意味。アメリカにもキングケーキというのがあります)はなぜ誰も見向きもしないのだ! と憤慨していましたが、翌年にはおなじドイツ語圏のシュトーレンが大流行して溜飲をさげたものでした。 今度はシュトーレンがガレット・デ・ロワとおなじ運命をたどって忘れ去られていくのかと思うと、世のうつりかわりの無常さを思わずにはいられません。 それにしても、ふだんフランス菓子を愛好している私ですが、こうしてドイツ/ウイーン菓子について書いているとはたして自分はどちらが好きなのかと思わずにはいられませんね。 フランス菓子でも大好きなのはフォレ・ノワールですし。 フォレ・ノワールはさくらんぼとさくらのリキュールを使ったケーキで、その名は「黒い森」という意味。ココアの入った黒い生地に白いクリームという取合せが、黒い森に積もった白雪を思わせるのでこの名があると言われます。表面には枯葉をイメージした薄いチョコレートをあしらうのが一般的。 このお菓子、じつはドイツが発祥で、そちらではシュヴァルツヴェルダ- キルシュトルテ、つまりは「黒い森のさくらんぼのケーキ」と呼ばれているのですね。 これがドイツに近いフランスのアルザス地方に伝わってフォレ・ノワールになったのだと思います。 ようするにフランス菓子であると同時にドイツ菓子のエッセンスも持っている、それがフォレ・ノワールで、それが一番口にあう私はフランス菓子派なのかドイツ/ウイーン菓子派なのか、悩んでしまいます。 |
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