《森 光年》
大阪・日本橋の電気街という似つかわしくない場所に存在するオーセンティック(正統的な)バー『UMEYA』で当サークルのメンバー、風見鳥と飲んでまいりました。 最近の私はといえば、フランスの夏の定番であるアニスのリキュール、パスティス(歯磨き粉の匂いがするといって日本では嫌われがち)をスパークリングワインで割った『午後の死』というカクテルがお気に入り。 中二病のようなネーミングですが由来はヘミングウェイの短編のタイトルから。 発案者もヘミングウェイです。本来のレシピはアブサンというリキュールをシャンパンで割るというものですが、アブサンが製造禁止になっていた時期に代用品であるパスティスやペルノーで作られるようになりました。 ワインの方も、シャンパンなんてワインバーでもない普通のバーにそうそうあるものでなし、仮にあったとしても値段がとんでもないことになりますので普通のスパークリングワインで。 ところがなんと、この日の『UMEYA』ではそのスパークリングワインが品切れ! すっかり午後の死の口になっていた(変な字面)私ですが、とっさに頭に浮かんだすみれのリキュールを使ったカクテル、バイオレット・フィズを注文。 ジン、すみれのリキュール、レモンジュースとシロップをシェイク。さらにソーダ水で割ります。夏らしくすっきりと辛口に作ってくださいました。 さらにもう一杯、ひさびさに飲みたくなってハーベイ・ウォールバンガー。 ウォッカのオレンジジュース割り、いわゆるスクリュードライバーにイタリアのバニラのリキュール、ガリアーノを浮かべたカクテルで、オレンジにバニラですから美味しくないはずがありません。 通常はステアで作るカクテルですが、『UMEYA』のマスターのはボストンシェーカーで作る変化球のレシピ。 以前に飲んだときとは香りがちがって、より私の好みだったので聞いてみたらウォッカが変わってたんですね。 エリストフというフランス製のウォッカで、ラムで有名なバカルディ社が流通を手がけているようです。なるほど店内にポスターが貼ってありましたが、バカルディ社は商売熱心なあまり広告が俗っぽいというか、ギラつきすぎて品性に欠けるところがあるのがどうも。 バカルディ社の布教活動のおかげで猫も杓子もバーでモヒートを注文するようになり、全国のバーテンダーさんたちが来る日も来る日もグラスにミントの葉っぱを突っ込む作業に追われて四苦八苦したということもあります。 そんなわけで美味しいお酒をいただいた森光年なんですが、なんと少し見ぬ間に『UMEYA』のマスターが丸坊主にになっていてびっくり。
おもわず「水島ー! 一緒に日本へ帰ろう!」と叫んでしまいましたが、とつぜん頭を丸めた理由はマスターのお母様にもわからず、本人も黙して語らず。
私の推測ではおそらく、ある日マスターが家を出ようとすると老人と病人と死者と修行僧に出会い、出家を決意したのであろうと。いわゆる四門出遊ですね。 ちなみに仏教では生老病死の苦悩を四苦と呼び、そこに愛別離苦(愛するものと別れる苦しみ)怨憎会苦(憎い相手に出会わなければならない苦しみ) 求不得苦(求めるものを得られない苦しみ)五蘊盛苦(心身から湧き出る苦しみ)の四つを加えて八苦と呼びます。 いわゆる四苦八苦とはこれのことですね。 しかしながら、時代とともに人の苦悩はいや増すばかり。四苦や八苦ではおさまりきれぬ細分化された苦しみがこの世に無数に存在するであろうことは論を待ちません。 個人的には上の八苦に「靴の裏は真っ赤だけどそれ絶対クリスチャンルブタンのじゃないだろうという安っぽいニーハイブーツをドヤ顔で履いている女性に出会わなければならない苦しみ」を加えていただきたいところ。 みなさんも四苦八苦に加えて欲しい苦しみございましたら、涅槃におわす大日如来様までどしどしお寄せください。 さて、おそろしいことにここからやっと本題なのですが、その世界中の女性に愛されているフランスの靴ブランド、クリスチャンルブタンが新しいムービーを公開しまして。 ルブタンといえばなんといっても、目にも鮮やかな真っ赤なソール(靴の裏)がセクシーなのが特徴なのですが、そのレッドソールはじつはこのようにして作られていた……という映像になっております。 あー、なるほどこうやって一つ一つルブタン氏みずから手塗りしてるから一足八万円もして…って、そんなわけあるか! いやはや、なんともフランス人らしい。これがエスプリというものでしょうか。 で、なんで今回この映像をご紹介したかと申しますと、クリスチャン・ルブタン氏って見る角度によってはプロレスラーの武藤敬司にそっくりだよなあ、ということを言いたかっただけなのでした。 |
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