《森 光年》
デザイナーのトム・フォードが最新のコレクションで、ラッパーのジェイZがトム・フォードをパクったツアーTシャツのデザインをパクったそうで。 これだとなにがなにやらわかりませんが、どうやら以前から『TOM FORD』と大書されたパチもんのフットボールジャージが一部で流通していたようで。 そこから着想を得たのでしょうか、ファッションオタクとして知られるアメリカの超大物ラッパーのジェイZが『TOM FORD』と大書されたツアーTシャツを作ったようです。 で、本家本元のトム・フォードがそのデザインをパクってドレスにし、コレクションで発表したという、なんとも遊び心のあるやりとり。 さすがどちらも超大物、やることが粋です。 トム・フォードといえば、かつて傾きかけていたグッチを再興した名デザイナー。現在は自身のブランドを展開しつつ映画を撮ったりして悠々自適。 コリン・ファースを主演に迎えたその映画『シングルマン』は高い評価を受け、『英国王のスピーチ』の監督はこの作品を観て同作の主役をコリン・ファースに依頼したといいます。 私も劇場で見ましたが、とてもいい映画でした。 一方のジェイZはつい先ごろ『華麗なるギャッツビー』のサウンドトラックを担当したばかり。この二人が手を組んで映画を作ってくれないかな、などと妄想してしまいますね。 "TOM FORD" Full Show HD London Fashion Week Fall Winter 2014 2015 by Fashion Channel そんなわけで森光年なんですが、日常の些事で恐縮ですけども、いつも買っているドリップ用のコーヒー豆の産地が変わりまして。 そのことで不覚にも感動してしまったので書かせていただきます。
以前にも何度か書いたかもしれませんが、そもそもコーヒー豆と一口に言いましても2種類に大別されまして(本当はもう一種類あるのですが、マイナーすぎるので割愛)。
ひとつはアラビカ種。これがいわゆるちゃんとしたコーヒーですね。カフェやコーヒー専門店で供されているコーヒーは、まず間違いなくアラビカ種と考えていいと思います。 ティピカ種とかブルボン種という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、それらはアラビカ種に属する品種です。 そしてもう一方がロブスタ種。アラビカ種と比べると害虫にも高温多湿にも強く、成長も早くて収穫量も多いので安く流通しています。 ロブスタ種はコーヒーというよりは麦茶に似た味で、そのまま飲んでもまあ美味いものではありません。 ところがこのロブスタ種、エスプレッソをブレンド豆で抽出するときに少し入れると格段においしくなるんですよね。イタリアではエスプレッソにはロブスタが欠かせないと言われているそうです。 昨今、町場のカフェではシングルオリジン(ブレンドでなく、一種類の豆だけということ)のエスプレッソが大流行しておりますが、やはりエスプレッソの王道はブレンド、それもロブスタの入ったブレンドだと思いますね。 もちろん、シングルオリジンのエスプレッソも豆の産地によってキャラクターが変わって面白いのですが。 一種類の豆だけを使って抽出したエスプレッソは通例、トマトを思わせるフルーティーな酸味が出るのですが、先日、大阪北浜の『ブルックリン ロースティング カンパニー』で飲んだグァテマラのエスプレッソはなんと梅のような香り! これにはびっくりしました。そもそも、当サークルのメンバー・風見鳥と一緒に行って二人分のエスプレッソを頼んだのに、それぞれ産地のちがう(グァテマラとメキシコ)のが出てきたことに驚きました。 テイスティングしてみろという挑戦でしょうか…男同士エスプレッソをシェアしあうという光景もかなりあれなのでしませんでしたが。 なかなか本題にたどりつきませんが、そう、ロブスタ種。 これがなかなか曲者で、なにしろ安いものですから市販されている缶コーヒーやインスタントコーヒー、はてはドリップ用のコーヒー豆にも入っている始末。 大手各社が大々的に売り出している商品にすら入っているんですから困ったものです(二種類の豆をブレンド、とテレビCMでうたっているのだけど、画面をよく見ると「アラビカ」と「ロブスタ」と書かれた豆が混ぜられていたり!)。 大手のけっこうな値段のコーヒー豆にもロブスタ種が入っている疑いがあるので(コーヒーの品種は商品に明記されていないので原産地表示を見て推理するしかないのですが)なかなか購入に踏み切れないんですよね。 そんなときにスーパーで見つけたのが、とある名もなき会社の安いドリップ用の豆でした。 前述のとおりコーヒーには産地を書く義務はあっても(不思議なことに缶コーヒーにはないようです)品種を書く義務はありません。 が、その安いコーヒー豆には「100%アラビカ種」の文字が! もちろん値段との釣り合いを考えて最初は疑いましたが、ためしに買って飲んでみるとロブスタ種のあの麦茶のような味わいがない。 私の舌などあてになるかどうかわかりませんが、どうやらロブスタ種は入っていないようです。 しかもよくよく見ると、商品のパッケージには一方通行の空気穴が! 焙煎された豆から発生するガスを抜くと保存に良いとかで、焙煎屋さんで豆を焙煎してもらうとこの空気穴が付いた袋に入れてくれるのですが、そこらで市販されているコーヒー豆の袋にはなかなか付いておりません。 それに商品の背面には美味しいコーヒーの入れ方はもとより、コーヒーの焙煎の深さの名称(シティローストとかフレンチローストとかいろいろあるのです)の説明まで記載されていて、作り手のコーヒーへの愛を感じさせます。 ただ、惜しいことに豆の産地はブラジルと中国…コーヒーへの愛はあれど小さな会社。低価格の商品を開発するために、そこは妥協せざるを得なかったのでしょう。 近年では中国や東南アジアに、ブラジルから苗を移植してコーヒーを栽培することが行われています。 コーヒーの裾野をひろげるそうした試みは素晴らしいですが、ただ、品質のほうはまだまだ既存のコーヒー産地には及びません。 しかしそれでも、低価格でアラビカ種のコーヒーを提供したいという志に応えるべくその商品を飲み続けていたのですが、なんと先日、お値段はそのままにブラジルとコロンビアのブレンドにリニューアルしておりました! さっそく飲んでみたら味もぜんぜんちがう! コーヒーらしい深みのある後口が加わっています。 それだけでなく、新商品としてブラジルとモカのブレンドも登場し、しかもブラジルとコロンビアのブレンドよりさらに安いという衝撃の展開。 従来の商品がけっこう売れたのでさらなるステップアップを目指したのでしょうか。 内部の事情は推測するしかありませんが、コーヒー愛を通り越して狂気すら感じるこの挑戦にはもはや感謝の言葉しかありません。ありがとう。よくやってくれた。 というわけで、岡山県の『珈琲まめ工房』という小さな会社の商品のご紹介でした。 どこかで見かけたなら手に取ってあげてください。 |
|
|
| 最初のページ |
|